7月21日『LOVE LOVE あいしてる 最終回・吉田拓郎卒業SP』をもって、
今期で引退する吉田拓郎のテレビにおける出演は終了。
どうやってこの番組と向かい合うか事前いろいろと考えたりもしましたが、
最終的には大げさに考えず、普通に見て楽しもう、そんなふうにしました。
改めてLOVELOVEをみて思ったのは、
「こういうクオリティの高い音楽バラエティが全然なくなってしまった」ということ。
そもそもLOVELOVEは拓郎がそれを目指してテレビ局にアイデアを出したのが始まりで、
だからこそ当時ズブなKinkiがキャスティングされたことで、
拓郎はすぐ番組を降りる決意をしていたそうです。
篠原ともえとともに「何でこんなヤツらと」。
ところがいやいやながらも番組がすすむにつれその気持ちが変わり、
当時50歳代ですっかり凝り固まっていた拓郎は、
「こういう若者が自分を変えてくれる」そのように気持ちが動いていったとのちに語っていました。
「君たちがいなかったら今の自分はいない。君たちに感謝」
最終回において、それは素直に拓郎自身の言葉で語られていました。
しばらくテレビから離れていたこともあって、
かなり久しぶりに吉田拓郎を目の当たりにする方が多かったことと思います。
正直その姿に一抹のショックを受けたのではないでそうか。
76歳の現実の姿に。
一般的な76歳から比べたら圧倒的に若いです。
しかし、その昔の時代の寵児であり、カリスマだったあの記憶のままだった人からみたら、
ただただその現実に驚いたことでしょう。
でも、あのトークを聞いたら全く好々爺になっていない拓郎がいて、
よくトークにおいても言われる「拓郎節=他人に媚びない」は健在です。
ただそれは「恥ずかしがり屋」をカバーするための無理であることもすぐわかります。
今回のトークでの「カッコイイ」はキーワードで、
引退を決めた要素には「カッコイイ」が続けられない、それもあったはずです。
音楽的には、よく以前「シャウトできなくなったら終わり」といっていました。
シャウトしていましたよ、今回。
ただ、歌はシャウトしていたけど、もうその声は理想のシャウトから遠ざかっていたんだろうと思います。
それは年齢からではなく、おそらく病からのことでしょう。
もうひとつよくこんなことも言っていました。
「ラブソングがかけなかったらおしまいだよ」とも。
最後の「sayonara 愛してる」、ステキなラブソングだったじゃないですか。
ラブソングとは男女の関係だけではなく「愛」がテーマの曲のこと。
『LOVE LOVE あいしてる』
吉田拓郎がこの番組のタイトルに何を求めていたか。
それはテレビというメディアを通して、
上質な音楽、そして上質なラブソングを届けたかったんだろうと信じています。
そして最後の曲のエンディング、腰をかがめて、ギターをバッと振ってバンドを〆たロックンロールな姿。
まるでチャック・ベリーのように。
あれが真の吉田拓郎。
シンガーで、バンドが好きで、R&Bが好きで、ロックンロールが好きな。
勝手に思われている、弾き語りフォークシンガーなんかじゃないです。
「ギターはね、どう持つかだよ。しょせん、カッコよくなくっちゃダメ」
番組を見終わるころにはやや油断して目を潤ませてしまいましたが、
これを書いている1時間後は「いい音楽番組を見た」清々しい気持ちになっています。
もしこの引退に「淋しい」なんてことを思ってたりしていたら、
「そんなふうに思うのがカッコわるいんだよ、このバカヤロー」
と叱られるだろうな(笑)