すこしだけ悪い言い方かもしれませんが、
町中華のベテランの中にはすっかり背中が曲がってしまった方もいらっしゃいます。
長年の、毎日毎日の鍋振りで。
それは、非常に尊くて美しい姿。
鍋に向き合っているときのあの集中力は、
美味しいものを創り出す魔法の儀式のようです。
船橋市にある「中華料理 昇竜」でそれを強く感じました。
船橋市芝山の一角。
駅で言うと新京成「高根木戸」。
駅からはそんなに近くなく、まさに町中。
赤いテント、赤い暖簾、赤い看板、食品サンプル。
まごうことなき町中華の風景。
日当たりのいい側はすっかり色あせ、
店の歴史を感じます。
サンプルにもヒストリーを感じます。
この日、たまたま近所のシニアさんの何かのサークルの寄り合いが。
ものすごく盛り上がっていました。
こういう使われ方も町中華の証しだし、
地元に愛されていらっしゃる証拠でもあります。
私はカウンターへ。
厨房にはベテランご夫婦。
この二人でこの宴会人数をこなすのはすごく大変そうなんですが・・
全くそれに慌てることなく手際よく捌かれています。
その実直なお姿・・
もうそれを見ただけでも感動。
さて、こちらも慌てたり急かしたりせず、
ゆっくり考えよう。
店名の付いた麺はスペシャルなはずなので気になります。
昇竜メン。
この価格努力・・
頭が下がります。
こちらもそう。
こういうお店が毎日歩いていけるところにマジ欲しい。
チャーシューワンタンメン、五目ワンタンメンが850円。
ぶっちゃけろくでもない専門店ラーメンがこれより高い意味が分かりません。
あまりに忙しそうなので水くらいは自分で。
びっくりするほどの鍋振りの音。
カンカンカンを通り越して、ガン、ガン、ガン。
この熱伝道、きっと料理が熱いはず。
タンメン。
半チャーハン。
タンメンと半チャーハンセット 900円。
やはりスープがしっかり熱い。
味はしつこくなくスープのうま味があっさり。
野菜もガッツリ熱い。
タンメンの野菜は「熱を食べる」、そう言いたいです。
麺は特別ではないけど、これでいいです。
いや、これがいいです。
いい彩りです。
やはりチャーハンも熱い。
少しラードが強いがその香りとしょう油がうまく合っています。
私の好きな味です。
うまい。
今、しっかりと食べる悦びに浸っています。
本当にごちそうさまでした。
人手がないから食器もたまってしまう・・
ほんと、大変ですけど頑張っていただきたいです。
この店を出る前、ふとあることが頭をよぎりました。
いや、むしろ人生そのものを考えてしまったかもしれません。
クリエイティヴとかマーケティングとか、それが大切なことだと認識しつつ、
いっぽうこの無言の鍋振りの音の前ではなぜかきな臭く思ってしまえる。
真の求道者の前ではそんな理論、理屈は虚しささえ覚えます。
そんなにサクセスは簡単に手に入るはしない。
背中が曲がるまで毎日繰り返す無言で実直な実践を自分たちはできるのか?
なかなか町中華は駐車場の確保が難しいのですが、
2台も確保してくださっているのはありがたいことです。
通り向こうの駐車場。
ここですね。ありがとうございました。