10年ぶり?に、銀座「煉瓦亭」へで食事をしてきました。
初めて訪問した時はもうえらく昔の19歳で(今から約40年前)、
まだ先代のご主人がレジ前に立たれていたのを思い出します。
その頃の洋食御三家は「煉瓦亭」「カミヤ」「資生堂パーラー」だったかな。
どうだろう、大学生時代は某友人と二人で1か月に1回は行っていたかも。
それはもうポークカツレツをはじめとするメニュー総なめ状態で食していましたが、
なかでも衝撃を受けたのは「小エビフライ」と「カキフライ」。
フライという料理の頂点がここにあるんだと得心したのを思い出します。
その後、この二つの衝撃の記憶を上回るフライ料理には出会っていません。
変わりませんね。この姿。
「洋食」という言葉が、さすがに令和までくると前時代的になった感は否めません。
ラーメンでいうところの
「支那そば」くらいなリスペクトの位置づけになればいいのですが・・・
そりゃそうというか、創業125年ですよ。
125年前がどれだけ昔の話か。
そのころといったらフォードがやっと自動車を組み立てたころですもん。
今は1階は使っていないのですね。知らなかった。
ということで2階へ案内されました。
わずかにこの風景の記憶もありますが・・・
正直にいうと・・・「古臭い」と感じました。
「昔のまま」といえば聞こえがいいけど、
本当の昔のままというのは当時の面影を残しつつ進化を伴ったもののはず。
これはどちらかというと時間が止まったままの風景。
あまり批判めいたネガティブな感想だけではよくないんだけど・・
この店の格式でこのパウチのメニューはないんじゃないかな。
高いです。
以前はここまで高いと思う感覚はなかったけど、今の相対価格では高いです。
この高さの根拠を見せてくれるのなら、
内装やパウチのメニューにもっとコストをかけていいのでは?
小エビフライは健在です。カキフライもこの日はオーダー可能でした。
十分に迷ったうえ決めたのは「メンチカツレツ」。
このメニューを選ぶのはもしかしたら30年ぶりくらい?
メンチカツレツをメインにして、ごはんものもえらぼう。
そうだなぁ、混ぜ込みオムライスである「元祖オムライス」にしよう。
先に「元祖オムライス」登場。
そして「メンチカツレツ」
特徴的なのは”木の葉”型に成形されていること。
カツレツでこのカタチで仕上げるのには相当な技術を要するはず。
サックリ切れました。
薄いながらほんのりと肉汁を湛え、それが逃されていません。
では・・・
う、美味い。
いわゆる肉屋さんのメンチ、観光地の名物メンチ、
それらはとても美味しいけれど、この旨さはそれとは別次元のもの。
どうしてここまで旨味を演出できるのだろう。
すごい技術だ。
ソースなど全く必要としない。
ソースはキャベツにだけかけよう。
このキャベツが瑞々しく大変美味しい。
ここでおまちかねである元祖オムライスへ。
最近では広島の福山で見事な混ぜ込みオムライスに出会っているので、
元祖となればそれ以上をどうしても期待してしまいます。
では、いただきます。
うーん、うっすら香るしょうゆ味。ギリギリに固められたフワッと感。
これまた見事な技術だとは思うけど、
なんだろう、どこかで時代遅れな感じがする。
強い主張でパンチがあるとか、薄味ながらもほんのり美味いとか、
そのどちらでもなくただただ中途半端な感じなのです。
元祖というクラシックはいいのだけれども、
その名前にこだわりすぎて単に「旧い」ままなので、
この時代の存在感が示されていないように思えてしまいました。
だからメニューにある値段にも釣り合うようには思えない。
そこでケチャップを混ぜてみると、
味は濃くはなったけどやはり押し出しがないことには変わりない。
メンチカツレツは逆にその主張がハッキリ出ていて、
またそれが技術に裏打ちされていて、
これなら高額ではあっても、ここでこそ食べれるものとして、
むしろお値打ち感を覚えられるものです。
今度はソースをそこしだけかけてみました。
ケチャップよりもしっくりはくるけど、所詮はごまかしみたいなものだからなぁ。
メンチカツレツは大納得の一品だったけど、
元祖オムライスに限っていうと、残念ながら今回は「ハズレ」です。
パセリは洋食の大事なデザート。
久しぶりに煉瓦亭を訪れ、
メンチカツレツの圧倒的な美味しさに触れさすがだと感動をしつつも、
いっぽうでクラシカルな部分が発展形に無いことをみてしまい、
悲喜こもごも複雑なる気分になって知ったのは事実。
自分の中で煉瓦亭は確固たる地位であったので、
その幻想から少し冷めてしまったかもしれません。
閉店時間となりみなさんお帰りに。
もう一度お店の中を見ていると、
やはり雑然とし過ぎているのではないかと思えたり。
もっと格式というか、格調というか、これではあまりに庶民派のお店で、
それはあのメニューの価格帯と合っていないのではないかと。
それに・・テーブルに1本の生花でもあればずいぶんと違う気もします。
お、アサヒオペンタックスes。
支払いは現金のみ。
あのレジスターが健在だからそうなのか、
他に理由があるからかはわかりません。
しかしそれにこだわる理由はこの時代にあるのだろうか?
もしかしたら「老舗のロジック」というものがあるのかもしれません。
でもこれまでどこかで125年の歴史を重ねるにあたって
変化を遂げながら進化してきたはずだと思うんですよね。
なぜ今はそれに陰りがあるのか。。。
もちろんそう思ったのは私だけのこと、そうかもしれません。
いや、きっとそうなのでしょう。
こんな気持ちになったからといって、もう足を運ばない、
そういうことではなく、また何度か訪れたいと思います。
私の何かのかけ違いであるかもしれないので。
そういえば「銀座黒猫物語」の第1話(これだけ無料)が煉瓦亭です。
ドラマ仕立てではあるものの、ここで詳しくその歴史が紹介されます。
リアルの黒猫が銀座の名店に導くという究極の(笑)ストーリーです。
少し銀座の夜を歩いてみました。
好きなんですよ。
銀座の夜、のほうでははなく、夜の銀座、です。