素晴らしい「料理」でした。
非常に考えられていて、計算しつくされた料理がここにありました。
奈良市の「ふじ門製麺」の「魚だしらぁ麺」です。
奈良のラーメン店はけっして多数あるわけではありませんが、
全体的に水準が高いような気がします。
全店回ったわけではないので言い過ぎのところはあるにせよ、
今まで知っている十数店舗のなかでは間違いなく白眉の存在です。
JR、同様に近鉄奈良駅から10分くらいにあるちょっと変わった建物。
全くの街中。観光客相手ではないのははっきりしていますね。
それにしても風変わりな建物。
かなり変則的な営業時間。
現在HPを確かめると13:50分終了となっていてさらに変則になっています。
このときはまだコロナ禍の前だったので隣同士になっていますが、
それでも満席で案内しないのはどうもこのお店の案内の法則があるみたいですね。
それはそれでいいことだと思います。
順番で案内されてカウンターへ。
魚だしらぁ麺、豚だしらぁ麺、この二つを即座に選べというのはなんと殺生な(笑)
とはいえ、迷ったら上位メニューから。
魚だしらぁ麺にしましょう。
なんと大盛りの差が20円!
推奨に従って細麺に。
これはいい英語表現の勉強になる(笑)
カウンターに着いても待ち時間少し多め。
あくまでもご主人の調理ペースを守るということでしょうから、それは全く問題なし。
見ていれば分かる通りかなり工程がおおく、しかもどれも丁寧に全霊で行っています。
これは確かに半日くらいしか体力や精神力が持たないでしょう。
私があえてラーメンと言わず「料理」と呼んだのはその丁寧さから。
ラーメンはラーメンで、準備に手間が大変にかかるも調理はクイックリーなのがその良さなので
区別をしたという意味ではありません。
ここで「料理」としたのは手間がかかる準備と、
時間がかかる最後の工程が組み合わさっていたからです。
ただ一つ欠点に見えるのは、余剰の飾りつけでしょうか。
この多数の薬味の中には本当には必要がないものがあるのでは?
ビジュアルに力点を置いたのかもしれませんが、
ここまで丁寧なラーメンはそれらを削ぎ落しても美しいはずです。
これは「能書き系」ラーメンにはよくあること。
けれどこの店はそういう系統とは一線を画していると思えるので、
そちらに寄せてしまうのはもったいない。
こう見てもやはり厚化粧感が否めない・・・惜しいなぁ。
揚げた具材がラーメンに乗るのは珍しい。
薬味というか利かせる味としてこの小海老と白髪ねぎ、これだけでいいんじゃないかなぁと。
ほんというとこの煮卵さえ要らない気がします。
なぜそう思うかと言えば、このスープが実によく出来ているからです。
これほどのスープにはそうそう出会えないでしょう。
意識高い系の表向き能書きラーメンとは明らかにレベルが違いますね。
バランスの極み、そういう感じです。
だからこそ薬味オンパレードがこのバランスには余計なのが残念です。
麺も素晴らしい料理のひとつ。
この麺はこのスープのために作られている、それが実感できます。
この小海老は後半に利いてきて存在感を増します。
なので薬味の中からは外したくない。
煮卵もいらないと思ったのと同様、このバラチャーシューも正直いらない、そう思いました。
このスープとこの麺の前に、いらないものはみんな削ぎ落した方がずっと完成されると思うのです。
もちろん、これらがないと一般的なお客ウケがないのは判るのですが。
ここにあるカイワレもこのスープには不要。
薬味とは風味を増すとか、味を締めるとかのためにあるものでしょうから、
この完成度の高いスープにはカイワレの苦みはむしろ邪魔になるだけ。
そこが一体化できる小海老と白髪ねぎとちがうところ。
薬味の点は抜きにして、とにかく素晴らしい「料理」でした。
ガっと食べて爽快感を得るラーメンとちがい、
素早くも丁寧に味わいながら食する「らぁ麺」だったと思います。
フジモンというとどうしても違うものを連想してしまいますが、無関係ですよね?(笑)