「日本一」を定量的に一つに絞れることはできても、
定性的な日本一を決めることは難しいものです。
ましてや「味」は個人差であり、もっといえば時間差もありますし。
なので定性的ではないが「日本一の評判がある」という言われ方はあります。
この栃木の「手打 焔」のラーメンには日本一の評判がよく使われているようで、
ラーメン評論家から、また多数ネット上で「日本一」が席捲していました。
ならばスルーは出来まい。
なぜにそう云われるのかちょっと確かめてみたい。
黒磯のICから10分、那須高原からでも15分。
目立つような場所ではなくても決して辺鄙でもなく探しやすいですね。
休前日の13時半、噂ほどの行列はありませんでした。
注文は並び中に聞かれます。
というか並んだ途端に「お決まりですか?」と言われてビックリ。
決めてくる人もいるでしょうし、私のように初めての人もいるし。
そこはもうちょっと・・・
通常基本から行くところ、目に飛び込んできた「まぼろしの・・」が接頭語になっている
「塩チャーシューメン」に気持ちが一変。
有名ラーメン関係者さんの色紙がたくさん。
あ、そうじゃない人も(笑)
「もはや日本一」
私もタイトルに靡くように日本一を使ってしまっており、
こういうこのがどんどん独り歩きしていっているのでしょうね。
いわばもはや事実以上に店を象徴する「記号」になってしまったのでしょう。
順番が来て入り口で「座敷の奥にどうぞ」と。
そこまで案内されたわけではなくただ言われただけなので、
どこどこ?と迷いながら・・
ここだな。
ここまでは丁寧ではないものの別に悪いわけではありません。
と!なんと座ったか座らないかで運ばれてきたラーメン。
カウンターでもないのにこんな秒速で運ばれてきた経験はないなー。
慌てて1枚撮影。
湯気は立ってるな。
上から1枚。
この時、秒速で出てきたことと併せて、
このビジュアルを見てやや心配に。。。
はっきり言って”雑”じゃないか??
具材はコーン。
6~7枚のチャーシュー。
紅糟(ホンザオ)で色付けされたであろう色合いですね。
材木系メンマ2本。
ここまで撮影秒数だいたい40秒。
ではすぐにいただきましょう。
・・・ぬるい。明らかにぬるい。
湯気が出ていたのはもしかしたらやや冷え気味のエアコン直下だったゆえか?
撮影を1分としても、それでこんなにもスープの温度が下がるとは思えない。
ぬるいラーメンなんて、ラーメンとしてそれこそ冷めたピザではないのか??
麺の評判はさまざまあるようですが、
このぬるいスープに入っているときにパフォーマンスなど出るわけがなく、
この状態ではただのもっさり麺としか感じるものがなかったです。
先ほどのピザで例えるなら、熱くもないピザ生地を云々言えないです。
もち上げてみると湯気は立ってる。
おかしい。
間違いなくスープはぬるく、麺も熱くない。
それでも噛みしめて確かめてみれば、独特の食感であることは感じます。
ただ、麺そのものの味わいは正直感心するものには思えなかったです。
小麦のうまさを秘めているようには思えず・・・
これ、いったい何のため?
ニラ1本。
これが何に寄与しているのだろう??
山盛り乗っていればいいとは言いませんが、1本で何かに干渉できるとは到底思えない。
冗談ではないのだろうけど、この1本のニラにはちょっとバカにされたかのよう。
スープがぬるいと必要以上にしょっぱさを煽ってしまうし、
浮いた油も熱さがないから邪魔なだけ。
どこかに化学調味料的なキツさも感じられる。
この塩味のなにが「まぼろしの・・」なんだろうか。
まさに現実ではない幻影を今見ているのだろうか?
ここまでくると全てがいい要素が感じられず、チャーシューの硬さにも閉口。
スモークの風味は別にして、うまみがどこに行ったのかわからない気が抜けた味だし、
材木メンマも、コーンもそこにあるという以上の効果は全くなし。
冷たいコーンは熱いスープに乗せなければ、余計にその熱を奪うだけ。
ラーメンの味の活性には必ず一定以上の熱さは必要。
逆に言えばぬるいラーメンはなにも活性化せず、全てがおじゃん。
相当以前の話、探検レストランという極めて面白い食番組で、
ダメダメなラーメン店を叩き直すという企画の時、
もっとも重視したのが「スープの熱さ」
改良されたラーメンが出されるときに「熱いです」と供されるのが
ちょっとした流行語になったほど。
この横道の話はともかくとして、日本一とかなんとかを置いておいても、
ぬるいスープのラーメンはあってはならんのです。
---------------------------------------------------
▼ 以前自分でこんなことを書いていました ▼
「熱いラーメン」は日本のラーメンの基本。
能書きは多いが冷めたスープを平気で出している店の気が知れない。
調べると、焔=ほむらとは「心の中に起こる、燃え立つような激しい感情をたとえ」とあり、
このラーメンからもそれを感じることに期待していたのに、
燃えたつ心どころか、ラーメンそのものがぬるいとなったらこの店名の意味すら解りません。
「塩だけ食べてもこの店のことは分からない」という人もいるでしょう。
しかし、日本一ともの評判をとろう店が、味の違いくらいでそんな落差があろうはずがなく、
ひとつがそうならもう全部の素性が知れたと言ってもいいんじゃないかな。
実は店内を見た途端気になっていたことが。
それは照明です。
そもそもが暗く、また照明は蛍光色の青白さ。
これで食事が映えるわけもない。
そしてもう一つ。田舎のシャコタンが横に着けられたときみたいに、ドンドコドンドコの重低音系のBGM。
こういうことは好みとかそういうことではなく、
美味しいものを提供しようとする飲食店の誠実さからは遠い位置にあると私は考えます。
すぐ隣のこれはいったい?
カラオケ店らしいけれど休業中。
もしかしたら、有名になりすぎて、絶えない行列をどうにかせねばと
オペレーションを変えていった結果がこうなのかもしれません。
回転とスピードを求めた代償としての秒速提供が「ぬるいラーメン」を生んでしまったのなら・・・
もちろん確証あってそう言っているわけではありません。仮定と想像です。
しかしスープのぬるさは気が付かないたまたまであろう訳がなく、きっと店主もわかっているはず。
それをわかってやっているということは飲食店の誠実さとして実にむなしいことですね。
前日、八王子の「弘富」で誠実さがこもっていた一杯をいただいていた直後だったので
つい”ラーメン店の誠実さ”とはそもそも何かを考えてしまいました。
そしてもう一つ、なぜにこの店に「日本一」という記号が付き今でもそういわれているのか。
それは、自分の舌を信じず、周囲の評価を「そう思い込んで」、
多くの人がその幻想に浸っているからなのかもしれません。
だって「ここは日本一」なんだから、と。
結局その噂を聞いて立ち寄った私も似たり寄ったりともいえます。
もう、こういう評判から入るのはやめなければいけないな。
この近くには以前直感で立ち寄った「さくら」があって、それはもううれしい出会いでした。
誠実さにも溢れていたし、美味しいものを提供しようという気概がそこにありました。
予備知識をもって訪れるのは、ある意味あらさがしの対象になったりもするので、
こうやって記録を残すものとしてはできるだけ素になって入り、
そして素直に感じたことを記録していきたいものです。