この数年間「郷愁」というものにとらわれている自分であることをよく分かっています。
昔のことをすぐに振り返ったり、昔の基準のまま今の時代で生きていたり。
それは郷愁というより因習なのかもしれず、
すでに人生上のレイトマジョリティ期に入っていることを意味しています。
ただしそれは長い期間を経た自然の成り行きとして受け入れようと考えています。
前提が長くなってしまいましたが「郷愁」は自身のアイデンティを振り返る
とてもとても重要な瞬間であり、それを見つける旅は続けていくつもりです。
千葉県匝瑳市八日市場の甘味処「うれし野」
郷愁が一気に高まった1時間がここにありました。
いきなりこんな文化財のような歯医者さんが・・古い町だなぁ。
匝瑳市って行ったことがありますか?
それよりなにより「匝瑳」が読めないというかたがほとんどでは?
日本一難しい市町村名じゃないかな??
私だって「そうさ」と読めたのはここ数年のこと。
ソーサなんてサミー・ソーサ以外知らないし(笑)
匝瑳の語源については、諸説あって定まっていませんが、発音での「さふさ」という地名があり、「さ」は「狭」で美しい、「ふさ」は「布佐」で麻の意で、“美しい麻のとれる土地”であったとする説や、「さ」は接頭語で、「ふさ」は下総国11郡中で最大の郡であったことに由来するという説があります。匝瑳は、「さふさ」に縁起のよい漢字を充てたものと考えられています。なお、漢和辞典によれば、漢字の「匝」は、訓読みで“匝めぐる”と読み、一巡りして帰るという意味があり、「瑳」は、訓読みで“瑳あざやか”あるいは“瑳みがく”と読み、あざやかで美しいという意味があります。(匝瑳市HPより)
ものすごく分かりづらい場所です。
この看板を発見するのも難しいし、クルマでは入っていけません。
まさに「路地」
この先です。
「営業中」の立看がなかったら全くわからないかも。
ここに来てもどこがお店かがまだ怪しいくらい。
「うれし野」という看板はナシ。
私の小さいころ下町の駄菓子屋、おもちゃ屋、もんじゃ(ぼった)屋さん
というコミュニティプレイスには確かに看板がなかった。
200円!!!
ナチュラルすぎてむしろ「昭和感」とかがありません。
そもそもそういう演出は全くなし。
私が来た時にはお客さんが一人いて、
会話に内容からすると子供の時この近辺に住んでいて、
社会人になってこの日夏の帰省をしてここに顔を出した、
そんな感じでした。
おそらく・・小さいころからのなじみなんでしょうね。
そういう場所がまだある、その人にとってのリアルな郷愁が存在する、
とてもとてもうらやましい。
この日は猛暑。
もう、なにがなんでも氷!
ええ!?やっぱり200円だ。
またたくさん種類がある。
一番高くしても430円なのかぁ。
ここは「200円」を味わおう!
おそらく一般的なら350円~くらいでしょう。
あえて200円の時代に一気に戻れる。それがいい。
もちろん電動ではありません。
これぞかき氷。
たのんだは氷では初めての「もも」
ピンク色だったので苺っぽいのかと思いきややはりももそのもの。
キーン、キーン。
この器もいい。
かき氷って確かにこんな器でよく出てきた記憶が。
そういうのもあったのかぁ。
普通かき氷を先に食べて、その後焼きそばなんていうオーダーはないけれど、
この日は思ったままに「うれし野コース」を組んでみよう。
前菜:かき氷もも 主菜:焼きそば 並
こうしてみます。
それにしても245円って。。。
シャーシャーといい音の後に運ばれた焼きそば。
焼いてくれたのはご高齢のおかぁさん。
これは掛け値なしにうまそうだ!
アツアツ。
ちょっと醤油っぽいソースでこれは美味しい。
この美味しい味付けなら、はっきり言ってメガ盛りにしても食べれたと思う。
私的にはここ数年のNo1。
※それはグルメ的なことではなく、先にあった郷愁を込めて、です。
たしかにこういうお店があった。
中学生くらいでも少しのお小遣いで食べさせてくれるお店が。
コースとすればデザートが必要。
何にしようかなぁ。
みつ豆250円、あんみつ300円。
嬉しいなぁ。
が、ここはやはり看板メニューにしないと。
まず、串団子。
これいってみましょう。
「あのー、1本でたのんでもいいですか」
「いいですよ。いろいろ食べてね」とおかあさん。
で、作ってくれていたのはおとうさん。
出来合いではなくちゃんと焼いてくれました。
この日、いろいろあって(笑)セーブしてますけど、
これを見ちゃったら5本は頼んでもよかったくらい。
いい色艶だ。
焼き立てでほんのり温かく、とてももっちりしていて美味しいことこの上ない。
80円でこの幸せを分けあわえることができる、こちらの老夫婦を心から尊敬します。
そういう仕事ができるならやってみたい(とてもできません)。
最後に、というか串団子とともに頼んだ「じまん焼」
こちらも1個80円。
こしあんを3個、1個をここで、2個を持ち帰りに。
本当はここにあるように1皿4個なんだけど、「かまいませんよ」と。
わがまま言って申し訳ないです。
ああ、何とかわいらしい。
いわゆる今川焼(大判焼)から見ると横幅が2/3くらいの大きさ。
しばらく見惚れてしまいました。
実は見ほれる理由がもうひとつあって、
熱くて食べれなかったから(笑)
ここ数年どういうわけか猫舌化がすごく進んでいて・・(汗)
!!!!
なんだろう、和菓子というよりももっとふわっとした洋菓子のような、
フィナンシェ?そう思える食感。
これは美味しい。
なるほど「じまん焼」だ。間違いない。
2個は持ち帰り。
おとうさん、おかあさんともご高齢の様子。
途中「ちゅうもん、なんだっけ?」と3回くらい聞かれましたけど、
かえってそんな気を使わせてしまったことに申し訳ない思い。
もしこの先ここに来て、そういうことにイライラする可能性があるなら
絶対に来ない方がいいでしょう。
この、うれし野の時間の流れに従う、これ大前提です。
この1時間、私は幸せでした。
外の猛暑とは全く関係なく、私が過ごした50年前の夏に一人戻っていました。
もちろんその時代のままを味わった、ではなく、
自分が勝手に50年前にの「気持ち」に戻っていただけです。
これが郷愁というものなんだと思います。
この路地で聴こえていた蝉時雨にふと足を止め、一瞬目を閉じました。
旅は、新しい出会いの触れ合いと、旧い記憶の呼び戻し、その繰り返し。
後で知ったのは地井武男さんの故郷なんですね、匝瑳は。
まさしく地井さんぽの原風景のような街。
街歩きは本当に面白い。
これは持ち帰りの「じまん焼」
冷めても、いや、冷めるとまた違う感じの食感で美味しい。
はたしてまた「うれし野」へ行くことができるだろうか。
もうこの年になると、毎日が「最後」のような気がします。
悲観的ではなく。
新しい出会いと郷愁。
明日はどっちだ。
※毎回店舗情報や地図を示しますが、今回はやめておきます。