
- 第三の終章
なんでこの作品を好きになれないかというと「品がない」からかもしれません。コロンボ作品には常にノーブルな背景があったり、主人公の気品があったり、ユーモアやペーソスがあったりします。ところが主人公グリーンリーフにはそれがないし殺人の動機もありふれているし(殺人に正統化や美化できるものはないという世間常識が当たり前のこととして、これは小説上の話です)、さらには主人公に圧倒的な社会的立場がないという設定も今一つです。本来ジャック・キャッシディはイヤミと品とを兼ね備え完璧なふるまいで常人の人間臭さ見せない主人公像がピッタリなのだから、どうもこの設定主人公とはすり合わない気がするわけです。ストーリーとして終末の反抗の暴き方は悪くはないと思うのですが。コロンボシリーズでは必ず入る適役とのコント的シーンがほぼ出てこないのも、主人公がさほどの難敵ではないからでしょう。
- 愛情の計算
この脚本があまり冴えないのは犯人との対決姿勢がピリッとしないからでしょう。結局頭のいい犯人の設定ではありながら、殺人自体は用意周到ではなく思い付きに近く、ドアの靴のクリーム跡なんていう知能指数と反比例な間抜けな証拠が残っていたり、推理の妙が全体に感じられないのですね。例のお決まりの「走行記録」の使いまわしもちょっと。主役のホセ・フェラーの魅力も今ヒトツ・・いや、イマ三つくらいかな。唯一個人的にはジェシカ・ウォルターの登場がうれしかったですね。むしろジェシカ・ウォルターをこの話の主人公にした方が面白くなったんじゃないかなぁ。最後の強引なでっち上げもあれはないですよね。謎のホワイトヘッドさんの登場はよかった(笑)それにしても若かりし頃の原田大二郎のセルフ棒読みっぷりがすごい(笑)
- 殺しの序曲
人気投票ベスト11位と高ランキングではあるものの、私の個人的趣味には全く合わない作品。主人公の社会的地位、周囲の配役、いろいろな人の心の機微、何度か挟まれるちょいコント(笑)と、コロンボシリーズのあらゆる要件を一応には備えています。ただ・・犯人のキャラクターがつまらない。いい人なのか、性根が悪いのかなんだかわからないし、頭がよかったり、すぐにキレたり、こういう言い方は変ですが矍鑠たる魅力ある犯人像じゃないんですよね。セオドア・バイケルははっきり言ってミスキャストだったのでは?どちらかといえばこの作品のシリーズきっての「謎解き」に人気が集まっているのかもしれません。私のコロンボ価値観は謎解きへのフォーカスではなく、動機を浴びりだす心理戦なので。
- 悪の温室
これも主人公の設定が実に弱く、そもそも何をしている人か全然わからないし、もちろん際立った社会的地位を感じられず、それどころか「親戚のおじさん」の金の横取りという脚本設定もつまらない。犯罪に及ばざるを得ない人間の微妙な心の動きであったり、犯行は憎むが犯人にほんの少しの同情を抱かせる、コロンボシリーズ本来的な持ち味がありません。それどころか堂々とした浮気が当たり前になっていたり、レイ・ミランドがカツラ(笑)だったり、なんか腑に落ちないことばかり。唯一この作品の存在価値をいえばシリーズ中の名物わき役ウィルソン刑事登場でしょうか。
- さらば提督
この作品の評価はファンの中で大きく分かれるところでしょう。でもみんな本心では「駄作」と思っているはず(笑)パトリック・マクグーハンの演出の奇怪さはねぇ・・。あのクルマへの乗りこみのクダリ、クレイマー刑事のドーナツくばりとか、造船場の大声シーンとかただただ回りくどくて全然意味が分からないし、最後のスワニーの狂人ぶりもさっぱり??いわゆるオールスター的にみれば、ロバート・ヴォーン、ウィルフリッド・ハイド=ホワイト、ブルース・カービイ、フレッド・ドレイパー、過去の名物役者が揃ったわけで、それは祭り的ではあるものの、かえってこの話では散漫になるだけ。「提督」という題名もつまらない。エンディングの謎解きはまぁまぁおもしろいけど、導き出すのがリサと老いらくの恋とは・・。しかしその若いリサの声を松金よね子がやっていたと知りプチショック(笑)