
- 別れのワイン
- 二枚のドガの絵
- 忘れられたスター
- 溶ける糸
- パイルD-3の壁
- 祝砲の挽歌
- ロンドンの傘
- 構想の死角
- 歌声の消えた海
- 逆転の構図
- 殺しの序曲
- 殺人処方箋
- 秒読みの殺人
- 権力の墓穴
- 策謀の結末
- 死者のメッセージ
- 意識の下の映像
- 魔術師の幻想
- 美食の報酬
- 死の方程式
- 別れのワイン
これはもう動かせないですね。
もろもろの場所で言い尽くされていますし。この回を見るとあの「死者のメッセージ」でコロンボが放った名セリフ「時には殺人犯を尊敬し、好意を抱くこともある」が納得。
さらにはその逆、犯人がコロンボに尊敬の念を抱き、好意をもって接する、その二人の間に生まれた一種の友情も抜きん出ています。そして秘書カレンとの老いらくの恋の虚しさ。こういう感情の複雑さが織りなしてこそコロンボの名作と呼べると思うのです。
ワインがイタリアを感じさせるのは当然として、赤いフェラーリが案外さりげなく効いているような気がします。
この作品の何がいいってそれはドナルド・プレザンスの吹き替えを担当した中村俊一さんでしょう。本人としか思えません。この声あっての別れのワインです。 - 忘れられたスター
たしかに殺人ではあるのだけれど、どうしても犯人に憐れみを感じてしまう作品。
夫婦間の愛情とプライドの行き違いが悲しい事件を生み、また積年の男と女の機微が微妙にとりなし、分かれのワイン同様「気品」に満ち溢れている作品。
なんといってもネッドの告白シーンは殺人事件ということを忘れてオトナの男のカッコよさに満ち溢れいました。身代わりの自白に対して「嘘よ!」と主人公が叫ぶ時の声優さんの迫真の演技はシリーズ出色。やはりコロンボ作品は声優さんの演技にかかっているなぁ。 - 二枚のドガの絵
上位2作品から見れば人間感情のもつれなどの深さはないものの、コロンボらしい犯人の追い詰め方の代表作だし、最後の一瞬で決まるあのシーン展開は何度見ても飽きることがないものです。
俳優としてもカッコよかった西沢利明さんの声もよかった。途中コロンボに対して「おまわりは・・」となじるところ、そして最後のあの慌てぶりは名演です。 - 祝砲の挽歌
これぞ哀愁。旧き者の郷愁。しかし事件解決の証拠はそういうこととは無縁の学生の悪戯が決め手というのが実にオシャレ。時々見せるラムフォード大佐の遠くを見つめる姿が印象的でした。名演ですね。
「祝砲の挽歌」という日本語タイトルはシリーズ白眉と思います。
名シーンではありませんが学生寮にてコロンボが呟いた「靴下が臭くってね」という一言がやけに印象的。そんな瑣末なことを言うドラマなんて他で見たことがない。刑事コロンボのリアリティ。 - 逆転の構図
これも最後のシーンが強烈な作品。人差し指を立てながら「今のを目撃したね。君も今のを目撃したね」。まだ幼いころ初めてNHKでコロンボシリーズを観た時、その頃若くて「別れのワイン」などの高尚な情緒がよくわからなく、むしろこの作品のようなストレートな犯人の追い詰め方の方にかなりのインパクトを感じました。のちよく見直してみると、殺人の仕立て方にはやや無理があるし、それこそ犯人の悲壮感があまり無いので、おのずとベスト3からは外れてしまいました。まぁそれはともかく、あんな奥さんだったら私でも殺していたでしょうね(笑)
あの修道院のコミカルなやり取りや、名優ディック・ヴァン・ダイクの服装のオシャレさなど、随所に作品としてのオモシロさが詰まっている名作とは思います。 - ロンドンの傘
これはもう良しわるしではなく、ロンドンだからいいです(笑)。
アメリカ、特に西海岸ではありえないクラシックな描写満載だし、ロンドンという街ではコロンボのキャラがまぁ際立つこと。
私的にはもうオナー・ブラックマンですよ!あの007屈指のボンドガールであるプッシー・ガロアが犯人だなんて。当たり前と言えば当り前ですが、愛車のプジョーが登場しない珍しい回ですね。
途中に短いシーンで出てくる「紳士倶楽部」がありますが、実は私行ったことがあるのです!某ビデオ撮影のロケ地として。素晴らしい場所でしたよ。 - 意識の下の映像
これは意見の分かれる作品じゃないですかね。バックボーンとしては殺人動機が短絡的ともいえるし、複雑な人間関係も出てこないし。どちらかと言えばトリックありきの代表作ということでしょうか。最後のロバート・カルプのあの敗戦の笑いも印象的。
初めて見た時キャビアがしょっぱいということ自体を知らなかったので、あれがどうして伏線になっているのかよくわかりませんでした。
あと干しぶとうとアイスティーの登場がなんだかツボです。 - パイルD-3の壁
「クラシックとカントリーじゃ水と油」「建築屋と殺人もな」という最後の会話がオシャレだし、そうなってしまった顛末も深くはないけどありそうな話としてよくできています。
元奥さんのゴールディとコロンボの関係性が他の作品にはない味を醸し出していました。
惜しむらくは犯人役の声優さんかな。これがあまり合っているとは思えず、演技的にもイマイチ。むしろゴールディの中村妙子さんは絶対に本人の声だと思ってしまうほどのドハマリでした。 - 秒読みの殺人
初期シリーズ中最も魅力的な女性殺人犯はトリッシュ・ヴァン・ディヴァー演ずる「ケイ」じゃないですかね。
昼は周囲を震え上がらすキャリアウーマン、夜は男を惑わすあの色気。才女なれど結局男を凌駕できない微妙なポジションを実にキリッと演じ切りました。
殺人実行時の「10秒、20秒・・」という緊迫感や、隠した銃をどうしても取れないエレベーターの中でのあの焦りなども印象的。
別荘でのシャツ1枚のあの姿にはやられましたねー。ああ、男と女の密会っていうのはこういうものなのかと。初期シリーズではほとんどお色気シーンが出てこないコロンボにあって、唯一の”濡れ場”だったかも。 - 溶ける糸
私的には10位ぐらいが妥当です。この作品に人気が集まったのはひとえに「スポックが犯人」、実はそこじゃないですかね。
私はそんなことより殺されたシャロンです!多少年増ではあるけど実に美人。白衣もいいけどコート姿がまた似合う。
愛嬌たっぷりのハイデマン先生のキャラもよく、結果殺されなかったことに視聴者みな安堵したことでしょう。 - ハッサン・サラーの反逆
ここらあたりはもう好みの問題。殺人のストーリーはめちくちゃだとは思いますし、各種の設定やら、オチのあんな大胆なこと全て無理があるにせよ、娯楽性だけみればシリーズの中では上位だと思うのです。2回も裾踏んでビリビリとか、最後の外交官特権の放棄を進めるときのあのお茶目さなんてなかなか愉快です。
声を演じた井上孝雄さんが実によかった。バルジ大作戦のロバート・ショウの声と共に、こうあってほしいという実に男らしい声なんですよね。もしも井上孝雄さんじゃなかったらこの作品の評価を下げます(笑) - 闘牛士の栄光
かなり異色の作品だし、殺人の動機に至っては「それかよ」と思ってはしまうものの、ロンドンの傘と共に「出張もの」としてよくできている作品だと思います。こういう出張ものにはダーク部長もそうですが、いい相棒がいてくれるのがミソ。今回の相棒はサンチェス警部。
コロンボには、忘れられたスターやホリスター将軍など、過去の栄光がかかわってくる殺人モチーフが多いですね。
ただこの回は声優陣が今一つかなぁ。モントーヤもそうだしサンチェス警部も。ただ一人、いい味出していた牧童のミゲルだけはバッチリでしたが。 - ルーサン警部の犯罪
これも評価が分かれる作品かもしれません。スポック人気から比べるとカーク船長のほうは今一つなのかな。
どちらかというとすこしばかり情けない役どころですし。完璧なる知能犯人が多い中、たまにこのくらい「安っちい」のが出てきてもらうとシリーズとしてはバランスが取れます。
元アパレル勤めの人間には殺人の解決の糸口にセーターの「モヘヤ」が登場したのがちょっとうれしかったですね。
山城新伍の吹き替えはちょっと無理があったかなぁ。かといってカーク船長の矢島正明さんじゃないし。 - 白鳥の歌
とにもかくにもジョニー・キャッシュが犯人をやっていることにぶったまげました。当時はすでに国民的スター歌手であり、役者は全然専門外のはずですから。
そうですね、日本で言ったら五木ひろしとか沢田研二あたりが殺人犯になった感じですかね。こういう配役は古畑任三郎にかなり影響していると思います。役どころはルーサン警部のウィリアム・シャトナーにも似たダメ軍人上がり。それに未成年の婦女暴行などよくこのキャラを引き受けたなと思います。
最後の終わり方はいいですね。ちょっと別れのワイン的な犯人とコロンボの通じあい。
全然関係ありませんが事故現場のタングボーンさんが来ていたネップツイードのウールコートが印象的でした。 - 歌声の消えた海
「ダンジガーさ~ん♪」コロンボファンなら誰でも知っているこのフレーズ。実に印象的です。
この作品のロバート・ボーンや、ウイリアム・シャトナー然り、マーティン・ランドー、ジョン・カサベテスといったTVヒーローの主役がまぁ殺人犯に抜擢されること。
特にロバート・ボーンはあの見た感じですからカッコつけやさんのシリーズ中では二枚目中の二枚目。中古自動車のディーラーなんて本来役どころとして似合うわけもないのですが、この作品ではイメージとうまく離れながら人間臭い演技をしていました。西沢利明さんの声もバッチリ。
ロケーションが船上という台本設定勝ちの作品で、他に似ていないところが人気のような気がします。 - 権力の墓穴
だいたい警察官がカジノで遊び呆けていたり、作品の設定としていろいろなところで無理がある作品とは思いますが(笑)、最後の追い詰め方の痛快さはシリーズな中でも上位ですよね。
それにしても「次長」というポジションが違和感で、もっと他に言い方なかったですかね。
捜査に協力する泥棒アーティを演じるヴァル・アベリーはコロンボシリーズのなくてはならない脇役の一人。「我々全うな泥棒の風上にも置けねぇ」とか「俺はネコがニャーというだけで逃げ出す」などの人間臭いセリフがイキでした。 - 偶像のレクイエム
少しだけ「忘れられたスター」と被りますね。
この回の殺人は少し複雑で、人間関係のもつれであったり、スターゆえの苦悩、同時に女性としての苦悩などがたくさん折り重なっています。出だしはコロンボのミーハー度合いマックス、ところが次第に犯人に向ける同情への変化は見事でした。
ゴシップ作家役のメル・ファラーは本来は正統派名優なれど、あのイヤミな演技はシリーズナンバー1。途中イーデス・ヘッドが本人役で出てくるのはこの回の大サービスカット。 - 黒のエチュード
この作品を捨てて、「5時30分の目撃者」を加えるべきかすごい迷いました。今でも迷っています(笑)。くだらない理由ですがジョン・カサヴェテスを選ぶか、ジョージ・ハミルトンを選ぶかで迷ったわけです。
結果こちらにした一番の理由は薄幸の奥様役を演じたブライス・ダナーの存在でしょうか。ブライス・ダナーはあのグヴィネス・パルトローのお母さん。結末のこの奥様の救いがたい悲しみは深く、コロンボでは割り切れない終わり方の一つ。 - 野望の果て
今おもしろいというよりかは以前おもしろかった作品だったかもしれません。犯人はやり手ではあるけど結局ハッタリだし、殺人計画自体は稚拙です。それでも19位に入れた理由は演出のキビキビ感というか、ダラッとしたところがほとんどないからですかね。
無駄とも思える洋品店のくだりもいいアクセントになっているし、時計や電話もいい伏線になっています。爆竹というのがお粗末ではあるけれど、それはそれでいいでしょう。
風車の弥七の中谷一郎さんはちょっとミスキャストのような気がしますが、秘書リンダ役の声を演じた潘恵子さんはやっぱりいいですね!唯一無二の声。 - 魔術師の幻想
ジャック・キャシディのキャラ全開。着こなし上手なキザな役どころは白眉です。
サンティーニというイタリア系もそう思えるし、まさかのステファン・ミューラーというドイツ系もまるで違和感ないし。やっぱりよく見れは生粋のアメリカ人だし。
殺人の動機はなんとなく砂の器的な出生の悲しさ。父親逮捕後の可愛い娘さんの将来を心配してしまいます。
コロンボにはこういうどこかの理不尽さを背景に持つと作品の味わいを増しますね。