にんじんのグラッセ。
正直、家庭でも、外食でも出会うという回数は極端に減ってるような気がします。
でも私にとってはこれがあることでずっと「洋食」が成り立っていたし、
このバターと砂糖の味付けこそ、しょう油以外に味わった初めての「洋」の味でした。
今でも忘れないボーリング場の2階。
そこは初めて行く「レストラン」という場所。
本当にレストランだったか今では怪しいものの、平皿に乗ってきてフォークとナイフを始めてみたのだから多分そうなのだと思います。
「ハンバーグ」
初めて食べました。それはもう衝撃。なんだこの食べ物は、と。
しかし、それよりも強烈な印象を与えてくれたのが「にんじんのグラッセ」
あのマズい?にんじんがどうして、どうしてこんな経験もしたこともない美味しい味になったのだろう、というじんわりしたショック。
それはもう不思議でしょうがなかったです。
マズいと思っていたものを一度美味しいと思うと、それが生であろうが、調理したものであろうが、もうマズいと思わなくなるから不思議です。
そのあと、ほんとににんじんをマズいと思ったことは一度もありません。
そしてその時は気が付かなかったものの、その後脳裏に刻まれたのは「調理」ということの概念です。
素材を別の次元に押し上げる、それが「調理」なんだと。
私が今でも料理好きでいられるのは子供時に出会った「にんじんのグラッセ」の衝撃のおかげです。
あの衝撃は今に至っても原体験として生きています。
突然作ってみたくなって・・・
といっても本格的なものではありません。
家で食べるのに面取りなんて不要です。
大きく切って、そのまま砂糖とバターを加えて煮るだけ。
少しだけ塩を入れるのは自分流。
ただ煮るだけでは味が染みないので、しっかり煮たら冷まして半日おくのも大事。
そうなんです、これも調理の過程だと思います。
この日はトンテキの付け合わせに。
セピアなトンテキに鮮やかなにんじんのオレンジ。
肉は基本的にセピア。
色の系統が同じで、彩度だけが違うオレンジが似合わないわけがない。
不思議なもので、色が似合えば味も似合う。
そんなに食べる機会がなくなったにんじんのグラッセですが、時に何かを思い出したいときに食べてみます。