小学校、中学校でのある記憶が、いまでも懐かしい感覚で甦る時がある。
それが「土曜日の下校時間」
お昼の晴れ上がったソラのせいか、何故だか心弾みながら家へ向かう時、毎日見ているはずの通学路が違う風景に見えたりする。
さらに何故だか、普段は友達とワイワイ帰るはずなのに、土曜日だけ独りだった、いやもしかしたら独りで帰るのが好きだったからかもしれない。
子供のくせにちょっとした旅感覚を楽しんでいたのだろう。
昨日、仕事の都合もあり、まさに土曜日のお昼に家路に着いた。
やはりあの感覚が甦る。
わざと車通りの少ない細い道で、ゆっくり帰ってみた。
日差しが強い。
一歩一歩に道の音が跳ね返る。
人の声はしないが、街の音がする。
日向ぼっこをする猫の姿。
枯れかけ始めた紫陽花。
古い家が取り壊されていた。
誰もいないけど、寂しを感じない路地裏。
道端に季節外れの柿が落ちていた・・
みんな、あの土曜日に見た、あの風景だ。
土曜日というと、何故だかお昼ごはんが「焼きそば」だった。
なんでだったのかはまるでわからないが、土曜のお昼はみんなで焼きそば。
不思議なことに、違う家庭であるはずの今の自分の家でもそう。
自然に。
今や学校も「半どん」などないから、もう若い世代の人には土曜日の特別な風景が思い出にないかもしれない。
いや、彼らには彼らの土曜日の風景もあるのだろう。
私だって考えてみたら我武者羅な時にはそんな振り返りはなかった。
ノスタルジーは、歳を重ねて初めて気付く人生の小さな宝石。