マーケティング雑感

◆ビジョナリストを想う、「三国志」を振り返りつつ。

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1年にだいたい1回、何らかのカタチで「三国志」を通読します。

もちろん「三国志正史」ではなく「三国志演義」、いわゆるドラマ仕立てのほうです。

武と人情の複雑にして壮大なる大国のドラマ。

最初はその演義の複雑なストーリーに素直なおもしろさを感じていたものの、現在では「ビジネスリファレンス」として年に1度そのストーリーから多くを学び返しています。(この度想ったことはこの文の末尾に書き記しました)







特に今回は初めて中国が威信をかけて製作した「Three Kingdams」を観てみました。

過去、映像での三国志は正直たいしたものがなく、ドラマの壮大さと複雑な情緒を表現できずにいました。

あの「レッドクリフ」も映像の迫力だけを求め心中の複雑な辛みをほとんど伝え切れていませんでした。

「三国志」はその心理戦こそ本来のドラマのフォーカスポイントなのに。

この「Three Kingdams」は、過去のものとは完全に一線を画し、そのどちらもパーフェクトに伝え、配役も絶妙、演技の深さも一流、さらには戦闘はもちろん風景やセットに及ぶまでこれは三国志の集大成と言っていいのではないでしょうか。


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とにかく配役の絶妙さは全くこのドラマに違和感を感じさせません。多数の登場人物のイメージをまるで損なわないし、しばらくしていると過去のイメージすら払拭し、今やその本人かと見まがうばかり。

特に配役で的を得たのは「孫権」「曹操」「魯粛」「呂蒙」「張昭」「曹丕」「黄忠」「鳳統」。

キャラが存分に引き出されています。


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誰がなんと言おうと三国志一カッコウいいのは「趙雲子龍」。本であれドラマであれ、趙雲子龍は絶対に裏切らない。

信義にどこまでも厚く、武術は武器の何でも超一流、格闘でも無類の強さ、指示された策略は必ず実行し必ず成功、かといって自分で何も考えられないどころかいざとなれば知略は一級、背も高く美男、スタイル抜群。背が高い、学力が高い、位が高い・・この時代の「3高」。

このドラマでもその役回りがそのまま描かれ、どのような場合でも冷製沈着、しかもいざとなれば完全無比そして豪胆。

趙雲の見せ場はなんといっても「長坂の戦い」。万の大群を一騎でしかも君主の赤子を手に抱きながら突破したという信じられない離れ業。

このドラマでもおそらく戦闘シーンとしては最大。

このときの趙雲の長時間の死闘シーンは常人の活躍ではなく、伝説のマラドーナの5人抜き??の1000倍はすごい!

そしてその後の君主劉備との面会のシーンでは涙なくしては観れません。


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過去の三国志とかなり違う感じがするのは「呉」へのスポットの当て方。赤壁後は流れに沿って周瑜の死までが後日談的に割りとスルーされやすいところを、実にドラマチックに仕立てています。

その中心人物は「魯粛」。ここまで魯粛にスポットが当たったことはないかと。

そしてその人柄が実に明瞭に描かれ、頭脳明晰さに加えた心温かき人情家として度量の広さ、人徳の深き賢人の様子を伝えています。

他の演義では右往左往するちょっと損な役回りとして描かれる少しコミカルな感じですが、ここではその品位が際立った人物として誰もが認めるダイレクターとなっている。

表向きでは孔明と周瑜のつばぜり合いですが、この章での本当の主役は間違いなく魯粛と言っていいでしょう。


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もう一人、サブキャラではありますが非常に重要なのが「呂蒙」。

後に呂蒙はあの関羽の止めを刺す重要人物。けれど当初は比較的凡人であまり注目を受けないので演義全般ではあまり登場しないはずも、このドラマでは成長過程に関わる部分が非常に多く描写され、精悍な顔立ちも相まってとても印象的。

特に周瑜が永遠に旅立つ瞬間「時期大都督は・・」と遺言する時に一瞬「もしや自分の名前が!」と期待させる表情はじつに秀逸なシーンでした。(実際は魯粛が指名され、呂蒙はそれを支持する立場を取ります。しかしこれが逆に呂蒙の度量を広げ、後の全軍を任されるきっかけになったかと)

この役者さんは文武に優れた呂蒙をとても魅力的に演じています。

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演義の中で一番好きなのは「横山三国志」。もちろん全巻もっています。

横山三国志でのヒーローは劉備であり孔明。

それと仲違えるものはみなアンチヒーロー。

この辺はハッキリしており、特に孔明はほとんど超人扱い、そして本来は無骨者として扱いがしにくかった関羽であり張飛も同じくほぼヒーロー的な扱い。

漫画ではあるも人情の表現は小説並み、それでいて絵柄でちょっとコミカルな笑いの場面(孔明がこまったところなど特に)があったりなどさすがです。


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ドラマの裏話ではこんなシーンも。

関羽と劉備がビデオを観るシーンなんて中国4000年の歴史検証総崩れ(笑)



とはいえ、今やはりもう一度三国志を観るに、魯粛の放ったこの言葉は突き刺さります。

仁術を、覇術は超えられない

現代に置き換えれば、

どんなビジネスであれ、ビジネススキルだけではなく、ヒューマンクオリティが基盤でない限りそこに成功はない

経営は、経営者の度量がビジネスの限界を決め、また逆にその限界を解き放なつことをも出来る

そう言っているのではないかと。


そしてこの三国志では常に二つの視点があり、「大局と小局」、そしてもうひとつが「大義」。

小局は武将でも打開できます。

しかし大局はそうはいかず、思慕遠慮を働かせ、短期に結果を求めず、長きに道筋を立てる、それに秀でた者が策を携えてとき必ず勝利を収めています。

「軍師」「都督」「承相」・・いろんな役割で登場します。

あたかも現代における「マーケター」=CMOです。戦略家、でもあります。

しかしこのとき大切なのが「大義」。大義を定めその上で先を読む。ただの先読みをしたりはしません。

大義を為すための眼前の戦いに勝ち、次の戦略を練る。


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マーケターは単にマーケットを打開するだけではなく、ビジョナリストでなければなりません。

「大義」を定めるのが経営者、その大義を元に「戦略」を作るのがマーケター

大義を仁を以って理解し想像し夢を描き、最後に形に表わしていくのが役目。

劉備と孔明の関係はまさにこれなのでしょう。

孔明を「戦略家」とか「策略家」とだけ評するのはどうかと思います。

決してアタマの回転だけでの才ではなく、

山河の詩を好み、星空を眺めることをも忘れないロマンチストであるからこそ、大いなる優れたビジョナリストであったと考えます。


by sammag | 2014-11-04 06:30 | マーケティング雑感 | Trackback

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