もちろんこれは天文へのアプローチの度合いによってどの光学機器が必要になってくるのかは違うわけですから、赤道儀が如何にすごくても今の自分のレベルですぐに身近に置く存在ではない・・・
そんなとき、ふと星空を一気に身近にしてくださったのが、大野先生。
天文ファンであれば誰でもご存知の大野裕明先生ですが、アウトドアばっかりやっている(笑)我々はなかなか存じ上げませんでした。
ところが驚くべき気さくさ(笑)と、声楽家のような美声で、お会いした瞬間からフランクで接していただいたので、全然そのような方とは思いもよりませんでした。
のち、いろいろお話をしたところ一つの接点があり、先生の活動拠点は福島県田村市「星の村天文台」、それこそあの「あぶくま」にあるわけです。
私の書籍にも二番目に登場する「あぶくまキャンプランド」からそう離れておらず、観光地で知られたあぶくま洞のすぐそば、わずか20分くらいのお隣り。
あぶくまキャンプランドとの交流が一度ほどあったそうで、改めてオーナーの新堂さんに聞いてみましたら、
「大野先生は・・・あぶくまの宝です!」と力強くおっしゃられていました。
「うん、星を観るのに難しいこと考えながらじゃおもしろくないでしょ。それよりも、サッと観て、わーすげーな、それでいいのよ。」
あまり大野先生を存じ上げていない自分は、天文の専門家といえば知識と数字が飛び交うのではないかとついつい距離を置いてしまうわけですが、この第一声ともいえる一言は、このイベントを最後まで楽しませくださるまさに「ツルの一声」となったわけです。
じゃあ、どうやって「サッと観る」のか。
それが双眼鏡だったわけです。
これ、ものすごく重要なこと。
キャンプで星空を眺める、みな大好き。
しかし、星空を眺めるは肉眼、「星空観察」なら天体望遠鏡が必要、そう思い込んでいます。
実は「その間」が全然浸透していないのですね。いや、浸透していないどころか何も気付いていない。
天文ファンが双眼鏡を持つのはなんら不思議のないこととはいえ、キャンプ好きのフツーの感覚では、双眼鏡は「自然観察」つまりバードウォッチング等の平行視線につかうもの、そういう先入観しかありません。
「あのね、まず双眼鏡で星空観てごらん。いいよー、ほんとに。」
たったこの一言になんで20年近く気がつかなかったのかが不思議です。
そして、その時(まだ日中)素人数人に大野先生が「双眼鏡のフィットの仕方」を極めて短い時間で教えてくださったので、それを踏まえてもう一度夜に双眼鏡で星空を見上げてみました。
!!!!!!!!!!
あまりに簡単。あまりによく観える。
スバルを観た時、私の車にもある「六連星」どころかもっと何連星かわからぬほどそこには星があり、むしろ「ゴチャゴチャ」(笑)
「そう、だからね、昔の人はあれを”ごちゃごちゃ星”と呼んだわけ。」
それでいんですよね。あれがゴチャゴチャだなぁと見えたことが、なんだかその昔の人と一瞬にして同じ時をすごしたような気がしました。
星が見えた以上にグッときてしまったかもしれません。
実を言うと・・本当は天体望遠鏡も考えていました。
けれど、まずはそう急がず、むしろそれよりも広い視野で星に近づいたほうがおもしろそうです。
いや、なにしろおもしろかったのです、双眼鏡をじゃんじゃん動かし星を探し回っているのが。
肉眼で眺めれば「眺望」=star viewing、望遠鏡を覗けば「観望」=star watching 、双眼鏡はその中間「探望」=star looking、そんなかんじかもしれません。
この日さまざまな双眼鏡を試させていただいたときはただ目の前にあるものをやたらめったらいじっていただけでしたが、
後、光学機器としての性能はもちろん、アウトドアフィールドで自分がどういうアクションをしながらキャンプをしているかにちょうど合いそうなのはどれだろうと考察中です。
自分でも間違っていたのは「使い倒し」ていいのかどうかの先入観。
いや、いいんですね(笑)。上の2枚の写真のように、そういう造りになっているワケで。
しかし、その後、ビクセンの古賀さんに教えていただいたところ、「8倍は初めてにはいいですよ」と。
つまり倍率が高ければそれだけブレるわけですし。
倍率が高いからよく見える、ではなく、安定して長く見る方がずっと瞳も慣れて、自分の目が双眼鏡のパフォーマンスをむしろ引き出し始めるのかもしれませんね。
クルマも馬力のある車がその人にとっていいクルマなのではなく、ドライバーが一番エンジンの太い帯域を長く引き出せたときそのクルマの魅力が一番高まるわけですから。
このニューフォレスタは「ダハ型」というようで、星空鑑賞なら「ポロ型」のがいいというアドバイスも。
アルティマ Z 8×32、見え味の鋭いロングセラーだそうです。
このポロ型はいかにもトラディショナルな双眼鏡っていう感じがしますよねー。
子供の頃、双眼鏡といったらゼッタイにこのスタイル。
視界も広いのでバードウォッチングにもよいようです。
但し防水機能がないのが、ズボラな私にはそれがネック。
非常迷いどころですが、私のキャンプスタイルがそうであるように、機動性と汎用性のバランスを求めたらどれかな、という感じになってます。
クルマがSUVなのもまさにそう。
単体の性能はもちろん、キャンプサイトに「あって欲しい立ち姿」も極めて重要。
カメラの三脚はマンフロットを使っているのでそれとの相性も重要。
しかしこの歳にしてまたアウトドアの楽しみが増えるというのは至上の歓び。
そうそう、これ私のアイ用品・・ちがった(笑)、愛用品。
ガルヴィの春のキャンプスタイルの取材のときもドンと置いてあった
コールマン H6×21(キャンディ)
6倍だけど7.3°の実視界が結構広いし、手ブレが少ないので先日の月食の時もこれでスマホと掛け合わせてなかなかモノが撮れちゃったりしました(難しかったですけど)
こんなかんじ。
そうそう、コールマンなら、
コールマン HR8×42WPというものあるのですよねー。
明るさも28.1と明るいし、実視界も7.3°
今年の新しいモデルで、けっこうリーズナブルなのはオドロキ。
最後に、大野先生の一文を。
私がキャンプのことを広めていきたいなと思う機軸とものすごくオーバーラップします。
「キャンプはいろいろ難しそう・・」そういうの、どんどんとっぱずしていきたいです。
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「星を観察しているんですか? 難しい分野ですね!」
このような会話を解消できれば… と長年、私は取り組んできました。
これから初めて星を見るという方には、もっと肩の力を抜いて星を眺めていただきたい。
天文学的な難しい理論や数値は知らなくても、土星に環が有り、天の川は天の架け橋のように見えることで、感激することができる。
宇宙の星々は、私たちの体の隅々の細胞を沸きたててくれるような、大きな感動を与えてくれます。
星座を見るなら、まずは肉眼で観察してみましょう。
次に、天の川を双眼鏡 で見ると、小さな星々の集合体であることがわかります。
さらに、あそこの明るい星はなんだろう? と天体望遠鏡を向けてみれば、それは土星であったり木星だったりします。
「肉眼の世界」「双眼鏡の世界」「天体望遠鏡の世界」という三本の主軸で、私はこれからも星空をわかりやすく広めていきたいと思います。
大野裕明