我が家の一員となった「りん」。
それは、小さな小さな偶然の出来事の重なり合いでした。。。。
その日(10月13日)は1週間前から決めていた印旛沼~印西ビッグホップへの道のり90kmの自転車ツーリング。
朝9時出発をして、道中いろいろな場所を楽しみながら帰路として八千代市に入ったのが16時頃。この日の最後の休憩にと寄ったのが道の駅。
そこが運命の場所となりました。
飲料の補給をしようと思い自販機の近くを通り過ぎた時、パッと目に入ったこのポスター。
「こんなところにネコを捨てるなんて・・・」
このポスターにとても複雑なものを感じながら飲料を購入し、駐輪場のチャリの元へ。
鍵を開け、ヘルメットをして、さぁ帰ろうと思ったその時、通り過ぎた一組の親子の会話を耳にしてしまったのが運命のいたずらだったと思います。
「ねぇ、おかあさん、なんでこんなところにあんな小さなネコがいるんだろうね?」
その一言は私の胸に弓矢が飛んできたかのように帰ろうとするしぐさを止め、全く無意識に近辺を探しはじめてしまい・・・
目の前の植栽の中(女の子が通ってきた小道)ではないかと注意深く覗いても何も気配なし。
そして自問自答。
「ここで探してどうする?探すことがいったい何になる?」
そう冷静になり、再びチャリへ戻ったその時でした。
私の目の前にいたのです、一匹のネコが。
駆け寄ろうと思ったその前に、このネコは飲料のゴミ箱のほうに向かい始め、しかしそこにいた大人たちが「しっ!しっ!あっちへいけ!」と何か持っているもので追い払らったのに、逃げるどころかニャーニャーいいながら離れようとしません。
その姿に胸が締め付けられ、ゆっくり近寄ってみると・・・
私のほうへゴロゴロしながら、そしてなきながら擦り寄ってきました。
すぐにおなかを出してゴロンゴロン。
ただ、私は当然ごはんになるようなものを持っておらず、いくら撫でてもこのネコの空腹は癒せません。
当然離れていきます。
しかし、そちらは車道。放ってはおけない。
何度も植栽の位置まで戻してもまた車道へ。
この間、ずっとないていました。
やっと落ち着いて立ち去ろうとしたので、自分はもう見送るしかない、だって何もしてやれないんだから・・・
しかし、やはり気になって後を遠巻きに着いていってしまったときに見てしまったのです。
自分の何倍もある大きなゴミ箱に必死に飛び乗り、そしておそらく自力で開けたのであろう小さな小さな穴に入っていったその姿を。
そしてこの後、このゴミ箱の中に埋もれ鳴き声も聞こえなくなりました。
あのポスターの「えさをあたえないでください」、そして女の子の一言「なんでこんなところにあんな小さなネコがいるんだろうね」、その連鎖が脳裏を繰り返し、しかし自分では何もそこから答えを引きだすことが出来ない、そのモヤモヤを解消できず、いつの間にか秋のつるべ落としで沈んでしまった夕暮れに時間が経ってしまったことにやっと気がつき、帰路に着きました。
そして家族にこの出来事を報告。
実はあまりにも深刻になっていたのは私だけ。
奥さんは「そこまで言うのなら連れてくればよかったじゃない」と事も無げ。
息子も娘も「運命でしょ」と。
そしてテレビでは10年に1度だという大型台風26号直撃予想のニュースが。
「こんな台風が来たらどうなるのか・・・ねぇ、明日の朝、行ってみない?もし逢えなかったらそれも運命。ゆめだってそう。再び逢いにいったらその目の前にいたのだから。もし今度の子が運命なら逢えるよね。」
翌朝6時、ダンボール1個を携え、車で一路八千代へ。
「そんなさぁ、すぐには見つかったりしないよね、だから30分探して見つからなかったらあきらめよう。どこかで区切りをつけなければならないし」
道の駅到着。
駐車場に車を停め歩き始めたその瞬間!
遠く目に飛び込んできた小さな小さな影。
「いたよ!あそこに!」
自分達の真正面。10m先の直線。誰かが食べ残していったものをあさっていた様子。
思いっきり駆け寄り、まず自分達を拒否しないか確かめ(本人が嫌がったらそれには従わなければいけないし)、すぐ擦り寄ってくれたことでまず抱っこ。
逢えた!足が震えました。
もう、何か後悔とかしたらいけない。理屈やナントカなんてもう関係ない。
ウチへ行こう!家族として。
ありがたいことに、近所に24時間のホームセンターがあったので7時台でも首輪、トイレ、キャリー、子猫用のご飯を買えました。
我が家の先住、ゆめとの初対面!
それはもう、ゆめはびっくり!
当然昨日の今日で専用のケージなどないので、臨時のものに入ってもらうことにしました。
狭くてゴメンネ。
少し落ち着いたところを見計らってちょっと開放してあげました。
精悍でなかなかの美猫。
ブラウン・マッカレルタビーにやや長めのコート。がっしりした手足、耳にはリンクスディップ。洋猫の血筋のようです。
首輪はピンと来たイエロー。やっぱり似あいます。
このあと、まずはとにもかくにも病院へ。
まだ名前がないので「ななし」さんとして診察。
2.1キロ。生後半年ちょっと、女の子。熱は平熱、ノミもダニも形跡なし。耳に少しの垢。人馴れもしてるし、毛も歯も実に綺麗ということで、
「ここ1ヶ月以内に・・・」
「捨てられたということでしょうか?」
「おそらくそうでしょうね。ずっと野良生活ではここまできれいではないでしょう」
たしかに野良猫だったゆめは、この病院に来たときノミだらけ、毛は硬くボサボサ、回虫もいました。(この子は翌日の検便で全く異常なし)。
あのポスターが思い出されます。
「お願いします!ねこを捨てないでください。」
この捨てられたであろうことにはもう言及しません。それが我が家にとって大事なことではありませんから。
逆にもしも生来の野良猫であればあのように人の多いところで近寄ってきたりすることはなかったでしょう。ずっと隠れていたはず。
あの時間、多くの人の前で自分は選ばれたんだ、そう思えばいいことです。
野良猫だった「ゆめ」にも、そしてこの捨て猫だった「りん」にも、逆指名された幸せモノです。
そして、ここからがほんとうの、「りん」の物語のスタートです。